繊維
FIBER

天然繊維は人類の歴史よりはるかに長く、人類は天然繊維と化学繊維を感覚で理解する

布の製品をはかる指標は、たくさんありますが、多くは繊維で決まると言っていいと思います。

にもかかわらず、「天然繊維」は、なぜ「天然繊維」になったのか?なぜ「天然繊維」だけの特徴があるか、なかなかひとことで言えないのではないでしょうか。

「天然繊維」は、広く言えば、すべて生き物です。綿と麻は植物です。絹は蚕であり、毛はヒツジやヤギなどの動物です。対して化学繊維は、石油を原料としたプラスチックです。

このページでは、「天然繊維」を最大限に活用するための情報をお伝えします。
では、「天然繊維」の大事なポイントを先にお伝えします。

天然繊維製品だけにある違い

天然繊維は「1000万年前に地球に誕生し、進化適応した時間を可視化したような物質です」

この違いを正しく理解すれば、より良く「天然繊維」を活かせるようになります。


天然繊維のきほん#

繊維 植物繊維(綿、麻)、動物繊維(毛、絹)


起源 500~1000万年前

天然繊維のはたらき#

植物の「天然繊維」のきほんを確認しましたが、それが人にあたえる効果を見ていきましょう。

「天然繊維」の感覚的な効果は、大きく2つの特性に分けられます。

・さわり心地などの 1.肌でわかる触覚性
・色などの 2.目でわかる視覚性

詳しく見ていきましょう。


1.肌でわかる触覚性

人の肌にやさしい
綿と麻は植物繊維、毛と絹は動物繊維です。それぞれの生物が、栄養を摂取して養分を蓄え、生きていた。それぞれの構成成分は炭水化物系や、タンパク質なため当然人間に親和性があります。

これらの生物から取れる繊維は、1000万年単位の長い時間をかけて起きた営みの結果です。

植物繊維で言えば、水や栄養素を吸収した形跡がそのまま繊維のフィブリルの形状や特性となります。だから綿や麻は、複雜で緻密で、結果、水に強く、洗濯に強いのです。


2.目でわかる視覚性

ドレスからカジュアルまで見た目が美しい


3.触覚性と視覚性の双方

長く使うほど良さが出る
天然繊維の特性のまとめですが、自然で緻密に積み上げられたものは複雜な物質なので、劣化も複雜に起こります。

摩擦には気をつける
天然繊維の強みの裏返しで、摩擦に弱いことが挙げられる。実用性と表象性が交差するようなポイントです。これは繊維が緻密で複雜性を持つがゆえの欠点である。植物繊維は比較的平気ですが、繊維を双方向にこすったりすると、ひずみが出るのである。なるべく摩擦を避けて優しく取り扱うのがこの弱点を回避する方法です。

正しいケアをしていれば、長く使うほど良さが出る特性を享受できます。


天然繊維のむかし#

天然繊維の誕生は1000万年前とお伝えしましたが、人類の祖先であるホモサピエンスへの進化はおよそ250万年前。グルジアの洞窟で3万4000年前の世界最古の亜麻繊維が発見されています。つまり、この頃には人類は天然繊維を使いはじめていたということです。

野生から採取していた天然繊維から、人間の手で生産するように移行したのが、約4〜5000年前頃。産業革命によって繊維に関わる仕事が機械化されはじめたのが2~300年前のことです。化学繊維は天然繊維を模倣して100年くらい前に作り始められました。

2017年の統計によると、天然繊維の一年間の生産量は、およそ3000万トン。化学繊維はおよそ2倍の量を生産しています。

出典:総務省統計局「世界の統計」と日本化学繊維協会「内外の化学繊維生産動向」を基に作成

生産量を見ると、合繊が圧倒的に多いが、次いで、綿がダントツで生産量が多いことがわかります。

化学繊維の生産は、1930年頃の誕生から徐々に増えてきました。生産量が大幅に増えた要因としては、人口爆発による、繊維の需要の増加があげられるでしょう。

出典:世界人口推計

それにともない、天然繊維も科学技術によって生産性を上げる工夫がされました。

出典:経済産業省、一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター

現在の世界の生産量と場所の統計データ#

それでは、いま現在の「綿」の状況を、世界の総生産量の比較から見てみよう。合繊は、比較のための例として出しています。

次は、「綿」を生産場所から見てみよう。

出典:総務省統計局「世界の統計」から

生産場所で見ると、インドとアメリカと中国を軸にして直線上に分布しているが、綿栽培にとって気候の影響や場所の制約が重要だからだと言えるでしょう。

ちなみに日本は綿をほぼ輸入しているが、日本の気候は綿生産には向いており、一部生産している。


天然繊維の製品のみほん#

天然繊維の名品
30s 以前のデニム(綿)501XX、アイリッシュリネン(麻)のスーツ、1級カシミア(毛)のセーター、エルメスのシルク(絹)スカーフ

デニムとTシャツ/ジェームス・ディーン

アイリッシュリネンのジャケット/マルチェロ・マストロヤンニ

フランネルスーツ/ウインザー公

トレンチコート 1941


天然繊維に向く製品とサンプル
デニム、Tシャツ、スウェット、ニットなど使い続ける日常着全般

天然繊維は、使い続けると違いが現れます。繊維の特徴である微細さが、触り心地である「質感」、見た目である「色」に現れるからです。化学繊維ではそうはなりません。

天然繊維は、使い捨てが引き起こす、ごみ問題や環境問題などを自然なかたちで解決してくれますが、これは偶然ではありません。