ローン
LAWN
綿織物の輸入禁止が生んだソリューション
「ローン」と他の布との違いは、どこにあるのでしょうか。
人々にどう認識されているか、布の物質としての製造方法の違い、歴史から、「ローン」の違いを導き出しました。
いまの結論はこうです。
「ローン」と他の布との違い
ローンは、産業革命期に綿織物をまねして麻織物になり、さらに綿織物へ移行した、さらりとして透け感のある、薄手で爽やかな布。
「ローン」は、シルクのような肌ざわりと言われ、見た目も少し光沢があります。
似ている布に、ボイルとオーガンジーがありますが、「ローン」はその中間のやわらかさです。
「ローン」が他の布と違うポイントは、
・産業革命期に綿織物をまねして麻織物に起源がある
・さらりとして透け感のある、薄手で爽やかな布である
主にこのふたつにありました。
これから、さらに詳しく説明するとともに、より深い「ローン」の価値の源泉を探っていきます。
ローンのいま#
いま日本で、人々は「ローン」をどう認識し、消費しているのでしょうか。
インターネットや雑誌等々を見る限り「ローン生地」は、 自作マスクやブラウスなど がいちばん認知されているようです。
布を素材として販売している市場ではどうでしょうか。
「Amazonのローン布一覧」や、「楽天市場のローン布一覧」、テキスタイルモールの布一覧などで、手軽に買うことができます。
こうやって全体的に見渡すと、布としてどのように使えるか、どのように売られているのかが見えてきます。
「ローン」は
- 夏用のシャツやブラウス
- ハンカチ
- 子供服
- カーテン
などに最適な布であり、そのために使われています。
ローンのきほん#
では実際に、物質としての「ローン」は具体的に他の布とどう違うのか?
たて,よこ糸に細番手の糸を使用した地の薄い糸数の密な平織で,漂白して薄のり仕上げをした織物及びその生機[きばた(ハンカチーフ,ブラウス,造花,ししゅう加工生地など)]。
日本産業標準調査会のJIS(日本産業規格)では、「ローン」はこのように規定されています。
「ローン」は、のり仕上げによるはり、細番手による決めの細やかさ、ツヤ、通気性のよさがあります。
たて糸よこ糸ともに60〜100番手という、細いコーマ糸を使います。
麻織物の風合いに近づけるために、製織後漂白または無地染、捺染をし、薄糊を施します。
このような「ローン」のつくりの違いはどこから生まれたのか?その起源にさかのぼってみます。
ローンのむかし#
ローンの起源
ローンは、もともとフランスの北部の都市「ラン(Laon)」で作られていた麻織物に起源があります。
その麻織物は、「カンブリック(Cambric)」や「バチスト(batiste)」と呼ばれていました。
ローンの誕生
17世紀ごろのヨーロッパでは、毛織物産業が国の主要産業であり、生活の中心に毛織物がありました。
そこにイギリスの東インド会社が、植民地のインドから綿を輸入し始めます。
綿織物は使い勝手がよく、ヨーロッパ国内で大流行し、毛織物は売れなくなってしまいます。
毛織物産業を守るために国が介入し、綿織物の輸入規制をしますが、国民からの需要は消えません。
綿織物の輸入禁止の網の目をくぐるように、純粋な綿織物ではない綿と麻の交織や、綿と毛の交織の織物は取引されました。
その織物のうち、フランスの北部の都市ラン(Laon)で作られた麻織物に似せた綿織物が、ローンと呼ばれるようになります。
ここで、「ローン」のきほん情報を整理します。
繊維 綿/植物繊維/セルロース繊維
組織 平織り
糸 細番手の糸
加工 漂白、薄のり仕上げ
起源 産業革命前後の時期にフランスのラン(laon)町
ローンのみほん#
「ローン」のいま・きほん・むかしの情報から、「ローン」の使い方のみほんを導き出しました。
名品・定番となった服を知ることで今後の参考になるはずです。
ローンに向く製品
夏用のシャツやブラウス、パジャマ、下着、ハンカチ、子供服、カーテンなど。ドレープ表現が向く。
「ローン」の他の布との違いは、
- 産業革命期に綿織物をまねして麻織物に起源がある
- さらりとして透け感のある、薄手で爽やかな布である
このふたつにポイントがあり、
- 夏用のシャツやブラウス
- ハンカチ
- 子供服
- カーテン
に最適な布だという結論が出ました。
それでは、「ローン」のさらなる価値はどこにあるのか。その答えを導き出すために、繊維のちがいの理解が必要だと考えています。
『繊維の違いを知る』もあわせて読んでください。
「ローン」の布の価値の探求は、今後も続けていき、さらに更新していく予定です。
本サイトCLOTHCHORDの『布の違いを知る』では、他の布も同じように布の違いの価値を探求しています。
さまざまな布の知ることで、布への違いの理解が深まり、視野がひろがるはずです。
ローンの参考資料#
出典:日本産業標準調査会ウェブサイト (www.jisc.go.jp/)