ドリル
DRILL
ドリルは、インディゴ染めがされていないデニム
「ドリル」と他の布との違いはどこにあるのでしょうか。
人々にどう認識されているか、布の物質としての製造方法の違い、歴史から、「ドリル」の違いを導き出しました。
いまの結論はこうです。
「ドリル」と他の布の違い
ドリルは、近代軍服の原点カーキドリルで誕生した、太い糸で厚手で丈夫な、カジュアルな布。
「ドリル」が他の布と違うポイントは、
・冬の軍服の毛織物サージから夏の軍服で綿織物を作った起源がある
・太い糸で厚手で丈夫さに特徴がある
・綿特有のシワ感のあるカジュアルな布
主にこの3つにありました。
これから、さらに詳しく説明するとともに、より深い「ドリル」の価値の源泉を探っていきます。
ドリルのいま#
いま日本で、人々は「ドリル」をどう認識し、消費しているのでしょうか。
インターネットや雑誌などを見る限り「ドリル生地」は、 ドリル生地としてはほとんど認知されていない ように見受けられます。
作り手には、ワークウェアの生地でいちばん認知されているようです。
布を素材として販売している市場はどうでしょうか。
インターネット上では、テキスタイルモールの布一覧などで、手軽に買うことができます。
こうやって全体的に見渡すと、布としてどのように使えるか、どのように売られているのかが見えてきます。
「ドリル」は
- ワークウェア
- 調理用白衣
- ホワイトデニム
- カラーデニム
などに最適な布であり、そのために使われています。
では、ものとしての「ドリル」は具体的に他の布とどう違うのか?
ドリルのきほん#
たて,よこ糸に20S (30tex) 以下の糸を使用した2/1又は3/1のあや織物。一般にカーキ色などの無地染めとする(作業服,運動服,家具カバー地など)。
日本産業標準調査会のJIS(日本産業規格)では、「ドリル」はこのように規定されています。
「ドリル」はデニム生地とほぼ同じ構造で、糸がどのように染め上げられているかで分別されます。
太い糸、織物 密度
「ドリル」は、太番手の糸で織られることで、表面の粗さが増し、カジュアルな印象になります。
曲げ特性が増す。引張仕事性は糸間の摩擦が減り、細番手より大きい。
「ドリル」の最大の特徴は、インディゴ染めがされていないデニム生地。たて糸よこ糸に 14〜18 番手以下の太い糸を使った急傾斜のうねがある厚手の綾織物。日本名はかつらぎ。
元はイギリス軍服で使われていた丈夫な毛織物サージから、綿が手に入るタイミングで綿に切り替えた布。軍服の布である。
このような「ドリル」のつくりの違いはどこから生まれたのか?その起源にさかのぼってみます。
ドリルのむかし#
ドリルの起源
もともと「ドリル」は、フランスの街ニームで織られていた、毛織物のサージを起源としています。
毛織物のサージは、綿織物のドリルと全く同じ織り方です。
フランスのニームで織られるサージは、17世紀の終わりからイギリスで人気でした。非常に丈夫なため、軍服にも採用されていた布です。
当時のイギリスの軍服は、真っ赤で、とても目立っていました。
ドリルの誕生
1840年代のイギリスは、インドへの侵略と植民地化のため、激しく戦争をしていました。
この時期は、侵略と同時にヨーロッパが綿を使い始めたタイミングです。
インドは高温多湿なため、インドに駐在していたイギリス軍は、いち早く綿織物を軍服に取り入れます。
ここでドリルが誕生します。
赤い軍服は目立ちすぎるため、泥をまぜて軍服を目立たない色カーキに染め上げます。
カーキの発案者は、インドに駐在していた英軍ペルシャワ嚮導軍団(スコープ・オブ・ガイド)付き将校ハリー・バーネット・ラムデン Harry Burnett Lumsden 中尉だったと言われています。
丈夫なドリル生地に、戦闘のための目立たない色の組み合わせ、これがカーキドリルの誕生の理由です。
イギリスの軍服は以降カーキドリルジャケット/トラウザーズとして定着します。
日本では、雲斎織という組織に、ドリルと同じ構造があります。
古くは足袋(たび)底にしていました。
ここで、「ドリル」のきほん情報を整理します。
繊維 綿/植物繊維/セルロース繊維
組織 綾織り
糸 たて,よこ糸に20S (30tex) 以下の太い糸
起源 1800年代ごろ
ドリルのみほん#
「ドリル」のいま・きほん・むかしの情報から、「ドリル」の使い方のみほんを導き出しました。
名品・定番となった服を知ることで今後の参考になるはずです。
ドリルの名品
カーキドリル、サファリジャケット
ドリルに向く製品
ワークウェア、調理用白衣、ホワイトデニム、カラーデニム
もう少しくわしく
「ドリル」の他の布との違いは、
- 冬の軍服の毛織物サージから夏の軍服で綿織物を作った起源がある
- 太い糸で厚手で丈夫さに特徴がある
- 綿特有のシワ感のあるカジュアルな布
この3つにポイントがあり、
- ワークウェア
- 調理用白衣
- ホワイトデニム
- カラーデニム
に最適な布だという結論が出ました。
それでは、「ドリル」のさらなる価値はどこにあるのか。その答えを導き出すために、繊維のちがいの理解が必要だと考えています。
『繊維の違いを知る』もあわせて読んでください。
「ドリル」の布の価値の探求は、今後も続けていき、さらに更新していく予定です。
本サイトCLOTHCHORDの『布の違いを知る』では、他の布も同じように布の違いの価値を探求しています。
さまざまな布の知ることで、布への違いの理解が深まり、視野がひろがるはずです。
ドリルの参考資料#
出典:日本産業標準調査会ウェブサイト (www.jisc.go.jp/)