コットンギャバジン
COTTON-GABERDINE

バーバリーが取得した特許、コットンギャバジン

「コットンギャバジン」と、他の布との違いはどこにあるのでしょうか。

人々にどう認識されているか、布の物質としての製造方法の違い、歴史から、「コットンギャバジン」の違いを導き出しました。

いまの結論はこうです。

コットンギャバジンだけにある違い

コットンギャバジンは、毛織物の雨よけマントから、綿織物へと変化した。
ギュッと目が詰まっていて、水や風を通しにくい布。

「コットンギャバジン」が他の布と違うポイントは、

・毛織物マントが起源である
・防水、防風に適した構造である

主にこのふたつにありました。

イギリス人は傘をささない、という文句を聞いたことはないでしょうか?この雨の話と、「コットンギャバジン」の布の特性は少し関係があります。

これから、さらに詳しく説明するとともに、より深い「コットンギャバジン」の価値の源泉を探っていきます。


コットンギャバジンのいま#

いま日本で、人々は「コットンギャバジン」をどう認識し、消費しているのでしょうか。

インターネットや雑誌等々を見る限り「コットンギャバジン」とギャバジン(ウール)の区別はあまりなく、 トレンチコートやドリズラー で認識されているようです。

布を素材として販売している市場はどうでしょうか。

インターネット上では、「Amazonのコットンギャバジン布一覧」や、「楽天市場のコットンギャバジン布一覧」、テキスタイルモールの布一覧などから、手軽に買うことができます。

こうやって全体的に見渡すと、素材としてどのように使えるか、どのように売られているのかが見えてきます。

「コットンギャバジン」は

  • check コート
  • check スーツ
  • check ジャケット

などに最適な布であり、そのために使われています。


コットンギャバジンのきほん#

では実際に、物質としての「コットンギャバジン」は具体的に他の布とどう違うのか?

ギャバジン
斜文線がよこ糸の方向に対して45以上をなすようにたて糸密度を多くした2/2又は3/1のあや織物。一般に無地染めとする。

日本産業標準調査会のJIS(日本産業規格)では、「ギャバジン」はこのように規定されています。

ギャバジンは、急斜文織りという織り方で、織物の中でも最も糸と糸との隙間が少なく、密度が高くなります。

ヨコ糸が表出する面積が少なく、たて糸とヨコ糸で二層のようになります。通気性はよくありませんが、水や汚れなど外部から侵入をある程度、防ぐことができます。

ギャバジンは、素材が毛か綿かの違いにより、「ウール・ギャバジン」と「コットン・ギャバジン」に分けられます、

「コットン・ギャバジン」はこれらの「ギャバジン」の特徴に、さらに綿由来の特徴が付加されます。


このような「コットンギャバジン」のつくりの違いはどこから生まれたのか?その起源にさかのぼってみます。

コットンギャバジンのむかし#

ギャバジンの始まりは、イスラム教徒が身につけていた毛織物のコートが元になったと言われています。

「ギャバジン」の語源は、巡礼服を意味するスペイン語のガバルディナ"gabardina"であると言われ、この巡礼服はギャバジンとして、15〜16世紀ごろのヨーロッパで流通していました。

男性用の、マントのような羽織物です。ガウンなどもあったようです。
その後毛織物のギャバジンは、雨よけのマントであったり、労働着のスモックとして一般的に普及していきます。

Walter Langley, Between The Tides, 1901, Fishermen wear knit-frocks and fisherman’s smocks

17〜18世紀にかけて、綿がヨーロッパに輸入されるようになると、市場を綿織物が席巻していきます。毛織物のギャバジンから、綿織物のコットンギャバジンへと変化するタイミングです。

1879年イギリスで、イングランド南岸出身のバーバリーの創業者トーマス・バーバリーが、防水用の綿の綾織布を発明します。
それを「ギャバジン(gabardine)」と名付けて、1888年に特許を取得しました。

1901年には、イギリス軍がバーバリーに、オーバーコートを依頼し軍の制服として着用されました。

バーバリー製のギャバジンの服は、極地探検家たちも愛用されました。1911年に南極点に到達したロアール・アムンセン、南極大陸横断探検隊を率いたアーネスト・シャクルトンなどです。

今はバーバリーが取得した、ギャバジンの特許は切れており、自由に生地を使うことができます。


ここで、「コットンギャバジン」のきほん情報を整理します。

繊維 綿/植物繊維/セルロース繊維


組織 急斜文織り


たて糸がヨコ糸の二倍以上


起源 ヨーロッパに綿が輸入されだした産業革命前後

宗教的な巡礼服として使われた毛織物のマントに起源がある?


コットンギャバジンのみほん#

「コットンギャバジン」のいま・きほん・むかしの情報から、「コットンギャバジン」の使い方のみほんを導き出しました。
名品・定番となった服を知ることで今後の参考になるはずです。

コットンギャバジンの名品
アクアスキュータムのトレンチコート、バーバリーのトレンチコート

トレンチコート 1941


コットンギャバジンに向く製品
コート、スーツ、ジャケット


「コットンギャバジン」の他の布との違いは、

  • 毛織物の雨よけマントから綿織物へと変化した起源
  • ギュッと目が詰まっていて、水や風を通しにくい

このふたつにポイントがあり、

  • check コート
  • check スーツ
  • check ジャケット

に最適な布だという結論が出ました。

それでは、「コットンギャバジン」のさらなる価値はどこにあるのか。その答えを導き出すために、繊維のちがいの理解が必要だと考えています。

繊維の違いを知る』もあわせて読んでください。

「コットンギャバジン」の布の価値の探求は、今後も続けていき、さらに更新していく予定です。


本サイトCLOTHCHORDの『布の違いを知る』では、他の布も同じように布の違いの価値を探求しています。

さまざまな布の知ることで、布への違いの理解が深まり、視野がひろがるはずです。

コットンギャバジンの参考資料#

出典:日本産業標準調査会ウェブサイト (www.jisc.go.jp/)