チノクロス
CHINO-CLOTH
すべてはイギリスのモノマネから始まったチノクロス
「チノクロス」と他の布との違いは、どこにあるのでしょうか。
人々にどう認識されているか、布の物質としての製造方法の違い、歴史から、「チノクロス」の違いを導き出しました。
いまの結論はこうです。
「チノクロス」と他の布との違い
チノクロスは、戦争のために生まれた、キメが細かく丈夫な布である。
「チノクロス」が他の布と違うポイントは、
・近代ミリタリーウェアの基礎になった起源
・軍人が使うため丈夫であり、見た目にハリがある
主にこのふたつにありました。
これから、さらに詳しく説明するとともに、より深い「チノクロス」の価値の源泉を探っていきます。
チノクロスのいま#
いま日本で、人々は「チノクロス」をどう認識し、消費しているのでしょうか。
インターネットや雑誌等々を見る限り「チノクロス生地」は、 男女問わずパンツやスカートやシャツの服 がいちばん認知されているようです。
布を素材として販売している市場はどうでしょうか。
インターネット上では、「Amazonのチノクロス布一覧」や、「楽天市場のチノクロス布一覧」や、テキスタイルモールの布一覧などで、手軽に買うことができます。
こうやって全体的に見渡すと、素材としてどのように使えるか、どのように売られているのかが見えてきます。
「チノクロス」は
- パンツ
- シャツ
- ジャケット
- ワークウェア
などに最適な布であり、そのために使われています。
チノクロスのきほん#
では実際に、物質としての「チノクロス』は具体的に他の布とどう違うのか?
ウエストポイント主にコーマ糸の双糸を使用した,たて四つあや(3/1)で,米国の軍服用織物から出た名前(ズボン,作業服地など)。
日本産業標準調査会のJIS(日本産業規格)では、ウエストポイントはこのように規定されています。 JIS規格では、「チノクロス」はウエストポイントと表記されています。
細番手、織物密度、細いの糸を用いることによって、表面のキメが細かくなり、光沢が増します。この特性が見た目のドレス感を演出します。
ここで、キメが細かくて丈夫な根拠が出てきましたね。
「チノクロス」は、細い糸と織りの細かさが大きな特徴なのです。
このような「チノクロス」のつくりの違いはどこから生まれたのか?その起源にさかのぼってみます。
チノクロスのむかし#
チノクロスの起源は、軍服の歴史からつながっています。
17世紀のイギリスの軍服は、真っ赤で、とても目立っていました。
18世紀になり、イギリス軍は目立つ軍服を改良します。ドリル生地をカーキに染め、カーキドリルが誕生しました。これが現代ミリタリー生地のおおもとです。
1898年、アメリカ陸軍は、イギリスの真似をして、軍服にカーキを取り入れます。以前のアメリカ陸軍はブルーの制服がトレードマークでした。正式にカーキ色を導入したのは米西戦争時の1903年です。
その後、独自に軍服に改良を加え、オリーブドラブ色Olive-drabがアメリカ軍を象徴する色になります。
このタイミングで誕生するのがチノクロスです。
中国産の布から作られたので、チノと呼ばれましたが、アメリカ軍での正式名称は、コットン・カーキ・トラウザーズでした。
アメリカ軍では、軍用品の規格を定める、ミルスペックという仕組みがあります。この仕組みにより、迅速に的確にモノを作り、さらに製造年代ごとにモデルを改良し続けることができます。
第二次世界大戦の中の1941年に完成したチノパンなので、ここでM1941モデルが誕生します。
この時期は年代ごとにモデルも生地も、微妙に改良改善を重ねているのが特徴です。
改良を重ねて、最終的にウエストポイントへと完成していきます。
戦後、アメリカ映画俳優のジェームス・ディーンや、スティーブ・マックイーンなどのスターが、チノパンを着用しました。こうして軍服だったチノパンが、若者のファッションアイテムになっていきます。
ウディ・アレン監督の代表作、1977年の映画『アニー・ホール』では、衣装を担当したラルフローレンが、チノパンをスタイリングしたことで、女性のファッションアイテムとして大流行します。
これが一世を風靡した、アニー・ホール・ルックです。
軍服由来の実用的な布であると同時に、カジュアルすぎない見た目がファッションでも通用し、「チノクロス」は現在まで残る布となったのでしょう。
ここで、「チノクロス」のきほん情報を整理します。
繊維 綿/植物繊維/セルロース繊維
組織 綾織り
糸 細い綿糸の双糸か単糸
起源 米西戦争時1903年頃
チノクロスのみほん#
「チノクロス」のいま・きほん・むかしの情報から、「チノクロス」の使い方のみほんを導き出しました。
名品・定番となった服を知ることで今後の参考になるはずです。
チノクロスの名品
第二次世界大戦時の 41カーキ、43カーキ
チノシャツとチノクロス
ダグラス・マッカーサー/1945
第二次世界大戦時のチノパンツ/1956
チノクロスに向く製品
パンツ、シャツ、ジャケット、ワークウェアなどに向く
もう少しくわしく
「チノクロス」の他の布との違いは、
- 近代ミリタリーウェアの基礎になった起源にある
- 軍人が使うため高い強度と、ハリのある見た目にある
このふたつにポイントがあり、
- パンツ
- シャツ
- ジャケット
- ワークウェア
に最適な布だという結論が出ました。
それでは、「チノクロス」のさらなる価値はどこにあるのか。その答えを導き出すために、繊維のちがいの理解が必要だと考えています。
『繊維の違いを知る』もあわせて読んでください。
「チノクロス」の布の価値の探求は、今後も続けていき、さらに更新していく予定です。
本サイトCLOTHCHORDの『布の違いを知る』では、他の布も同じように布の違いの価値を探求しています。
さまざまな布の知ることで、布への違いの理解が深まり、視野がひろがるはずです。
チノクロスの参考資料#
出典:日本産業標準調査会ウェブサイト (www.jisc.go.jp/)